映画レビュー「天使のくれた時間 (The Family Man)

パートナーシップの映画レビューです。
ネタバレトークイベントもやりました(下に動画リンクあります)。

今回の映画は「天使のくれた時間」

記事前半はオープニング以外ほぼネタバレなしで。

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あらずじ 

 

13年前、空港でロンドンに向かうジャック(ニコラス・ケイジ)を引き止める彼女(ケイト)のシーンから始まります。そしてすぐに場面は13年後、マンハッタンで大金持ちとして活躍している彼の生活に切り替わる。

13年経って、彼は選んだ道をひた走って、巨大企業のM&Aで兆単位のお金を動かしている。そしてたまたま入ったコンビニで、強盗事件が起こりそうになるのを止めに入ります。

あわやというところで事件にはならずに、その、強盗を起こしそうになった黒人と歩きながら、何かしらまっとうな暮らしの手助けを申し出るのね。

そこでその謎の黒人からは、マジかよなんであんたが?みたいなことを聞かれた主人公ジャックとの会話。

ジャック "Everybody needs something."

(だって誰でも何か必要としているもんだろ?)

黒人 "Yeah? Well, what do you need, Jack?"

(ほーう。そしたらあんたは何が必要?ジャック)

ジャック "I got everything I need."

(俺は必要なものはもう、全て手に入れたよ)

こういう会話があって、黒人は「これから起こることはあんたが招いたことだよ。面白いことになる。」みたいな謎の言葉を残して去っていく。「あんたの中に、垣間見えたもの(glimps)があるんだ。」

そして翌朝、彼はパラレルワールドの中で目がさめる。

その世界では、13年前置き去りにしたはずのケイトと、二人の子供と1匹の犬と暮らしている。そこで彼が体験する生活は、マンハッタンのそれとは全く違ったものだった。

パニックに陥るジャックがとる行動は?

***

みたいな映画なんだけれど、もうねー、パートナーのために人生を犠牲にすることと、愛ある生活を主体的に選ぶことの違いとか、その結果を引き受けるとはどういうことなのかがたっぷり描かれているんですよ。

ジャックは突然パラレルワールドからやってきたので、わけわからない。それが13年間変わらず愛を選んできた(らしい)妻の在り方に触れるにつれて、変化してくる。

13年経ってもラブラブな夫婦関係がどう可能なのか、詳細に描かれることはないんだけれど、でもはしばしに、選びとってきた「この関係性を大切にする」っていうことやその結果が見える。

これはなかなか名作であり問題作です。 

で、ここから先はその名作っぷりを、ネタバレしながらみていきます。

 

その合間のスペースに、ネタバレトークの動画を挟んじゃいます。


この映画のキーワードは、

" I choose us. (私は、「私たち」を選ぶ)"

「元の世界」では、二人とも独身で大成功している人物、自分の決めた道にコミットして、誠実にやり遂げる力を持っている人たちです。

そのケイトが冒頭の空港のシーンで、直感でジャックを止める。

それまでも二人で「散々話し合ってきて」決めた、二人それぞれの成長の道をやめて、今すぐ二人一緒の人生を始めようと呼びかけます。

そこで言われるのが、" I choose us. " 私は、「私たち」を選択する。

でも元の世界ではジャックはそのままロンドンに旅立って行ってしまったわけ。

この、「元の世界」では、二人はいわゆる成功への道を「選択」してコミットすることになって、十三年後にはそのすばらしい果実を得ていた。


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この映画ではジャックは「パラレルワールド」に迷いこむのだけれど、この第2の世界は、二人が13年前に、成功への道じゃなく "us (私たち)" を選んでいた世界。

マンハッタンのペントハウスに住んで大富豪になってる世界とは全く違っていて、ニュージャージーにごく普通の家を持って、二人の子どもの世話に追われ、義父のタイヤ屋さんで働いている、なんというか、比べてしまうならリッチではなく、平凡な人生。

そのことにはじめジャックはたいそうショックを受け、しばらくは全然受け入れられない。ケイトにも当たり散らします。

娘にも、「あなたは本当のパパじゃないわね」って見抜かれる。突然現れたエイリアンなんでしょうって。

でもね、次第に二人がずっと、「私たち」を選ぶ人生にコミットしてきた果実が見えてきます。


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子どもたちもとてもすばらしい。長女ちゃんが、エイリアンに対しても勇敢さと最大限の思いやりを持って接するところなどからして、とても大切に育てられてきたことがわかる。

友人たちのことばの端々にも、それが現れている。

「俺が不倫しそうになったときに、ジャック、お前が家族の大切さを教えて、止めてくれたんだ」みたいな会話とかが早々に出てくるわけ。

どうやって二人が関係を育んできたのか、その詳細はあんまり描かれないのだけれど、ケイトはジャックのことを、今でも熱烈に愛している。

13年たって子どもが二人できていてもなお、ラブラブです。

考えてみたら「あの二人が」、"us" を選択した世界ですよ。そりゃあそうもなるでしょう。

そして決定的な場面が訪れます。


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それは、ジャックが「元の世界」の成功と、「パラレルワールド」の家族の愛の空間を統合しようとしたとき。

どちらも手に入れようとして、ケイトに断りもなくニューヨークシティーでの大きな仕事を決めて、引越しも決めちゃう場面。

このときジャックなりに、誰もが羨む生活を手に入れることが家族のためになるのだ、と思ってさっさと進めてしまうのだけれど、ケイトから猛反対されます。

映画で直接のセリフでは語られないけれど、このときジャックは "us" を選択するのとは、別の道をひとりで突っ走っていた。

ケイトからは、「私に相談もなく」ということでキレられます。だいたい私たちの今の生活だって、すでにみんなから羨ましがられているすばらしいものだというのに。

この大げんかがあってそののち・・・。


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冷静になったケイトがジャックに、思い描いていた夢を語る場面がいいんですよね。


私たちはこの家で家族になった。
そして、白髪でしわくちゃになってもここにいて、孫が訪ねてくる。あなたは壁のペンキ塗りをしながらそこにいる。その暖かな世界。


「でももしニューヨークで仕事をすることが、どうしても必要だというなら。

 ほんとうにほんとうに必要なんだったら。
 こうした夢の全てをおいて、私はついていく。
 I choose us. 私は『私たち』を選択する。」


そんな感じのセリフが語られます。


ここで2回目の I choose us です。

これは、二人がコミットしてきた世界に、ケイトは変わらずコミットするという宣言です。

決して不本意ながら自分を犠牲にすることではないし、経済的な事情などの依存で持ってついていく話じゃない。ここがポイントだとぼくは思う。

主体的に、「私たち」を選択する。

これがこの映画のテーマなんだと思うんですよね。

彼女は" I choose you." とは言わないし、 "I choose myself." とは言わない。あくまで、「二人であること」「二人の関係性」それを選択する。


そんなことがあって、ジャックにも「私たち」を選択するとはどういうことなのか、そこにコミットするとはどういうことなのかということと、13年間積み重ねてきたそれが、どれほど愛溢れる人生を作ってきたのかということが、だんだんわかってくる。


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そして雪の中で娘と遊んでいるときに、「ほんとうのパパが帰ってきた」って言われるシーンとかもたまらないんだけれど、そんなふうに、「私たち」を選んできた素晴らしさをジャックが噛みしめるようになったときに・・・

突然、最初の黒人(天使?)が現れ、元の世界に戻らなくてはならなくなる。

そんなの受け入れられない!ってジャックはキレまくるんだけれど、どうやら無駄な抵抗らしい。

それがわかって、家に帰ってきて、ケイトと過ごす最後の時間のシーン。

これがまた最高に美しい。何度見ても泣きます。

美しいセリフと素晴らしい演技がたくさん詰まってるシーン。


ジャックがこの数週間過ごしてきて、慣れないことをいろいろやってきて、でも少しはいいこともしたかな、って尋ねた時のケイトのセリフ。

字幕では、「ジャックはいつもいい人よ」みたいな感じなんだけれど、英語では「あなたはいつもジャックだった。そしてそれはすばらしいこと。」みたいに言ってるんですよ。深いセリフだ。


そして、僕がどんなであったか、今目に焼き付けてくれ、それを忘れないって約束してくれ、とケイトに言うんだけれど、1度目は笑顔で軽やかに「約束するわ」と言うのね。


でもジャックは「もう一回約束してくれ」っていう。


ケイトはなんで彼がそこまで切実にこの約束を必要としているのかわからないけれど、重要なことだと言うことはわかり、2度目は実にまっすぐに「約束する」って答えます。


この2度目の「 I promise 」の演技は最高です。

僕の講座などでよくお伝えしている、成熟した大人の意識からのまっすぐさ。一切の防衛反応がないまっすぐさ。真実の自分を差し出すという愛が描かれている瞬間です。


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ジャックは「元の世界」にもどり、ケイトと13年ぶりに再会します。

そこでケイトは失恋の痛みを乗り越えて、やはり大成功しています。でも今日まさに、パリに転勤しようとしている日でした。


最後、空港までジャックは追いかけていくことにして、そこでケイトに語りかけます。少しの時間だけでもいいから、お茶を飲んで話をしたいって。


「でもいかなきゃ」というケイトに対してジャックは、パラレルワールドでの体験をただ語ります。このシーンもすごくいいんですよね。


そのセリフの最後でいうのが、この映画で3度目の "I choose us. "

僕は「僕たち」を選択する。


その後二人は空港のお店に入って語らっているシーンで映画は終わる。その後の人生がどうなったかは語られていない。


まあそんなこんなで、この映画は 「私たちを選ぶ」「この関係性を選ぶ」ということにコミットし続けることについて描いている、なかなか他にはない映画です。


よかったら是非見て感想など聞かせてくださいね。









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人々よ、自分の祖国を取り戻せ! (by ふたこわたる)

人々よ、自分の祖国を取り戻せ! アナスタシアシリーズ4巻「共同の創造」に描かれた「祖国」。愛し合う二人が、地球のシステムと調和した原初の楽園のような園を共同で創造する、というもの。その「祖国」に魅了されてしまった僕が、祖国誕生への道のりや、関連する情報を好き勝手に発信します。 (アナスタシアジャパンなどの公式サイトとは無関係です。)